事務所だより

駐在員トピックス

中国政府、越境Eコマースに関する輸入税を改正

訪日中国人旅行者による日本製品の購入、いわゆる「爆買い」は、昨年
来、日中両国のマスコミでも頻繁に報道されてきた。また、中国では日用品、食品等をインターネット上の販売サイト(Eコマース)を通じて購入する消費者が急激に増加しているが、ネット上の日本製品販売サイト(越境Eコマース)も人気を博している。日本製品の好調な販売は日本にとってはメリットであるが、中国国内は消費が低迷しており、中国政府は「爆買い」が国内消費低迷の要因の一つであるとみている。また、日本製品が輸入商を通じて中国国内で販売される場合とネット上の販売サイトを通じて販売される場合では、輸入税等により後者の方が安価なことが多く、関係団体から不公平であるとの声も挙がっていた。

このような状況下、中国政府は4月8日(金)から越境Eコマースに関する輸入税及び関連の法律を改正した。改正の目的は「公平な競争の市場環境を構築し、越境Eコマースビジネスの健全な発展を促進する」であり、改正により、「新興業態と伝統業態への支持、国外商品と国内商品との公平な競争に有利であり、市場効率を高め、共同発展を促進する」としており、改正された主な内容は次のとおりである。

①通常の貿易により販売・購入される商品との整合性の確保
 個人が使用する越境Eコマースによる輸入商品については、郵便物と同じ行郵税を徴収しているが、行郵税の対象は非貿易性質の物品であり、税率は貿易商品である輸入貨物の総合税率より低い。越境Eコマースによる輸入商品の実情は貿易による輸入貨物であることから、国内で販売されている同類の一般貿易輸入貨物や国産貨物の税負担より低く、不公平な競争を形成している。これらを是正するべく、越境Eコマースビジネスによる輸入商品について、関税、輸入増値税及び消費税の徴収を実施する。

②消費者のニーズを考慮し購入金額限度額の引き上げ
 越境Eコマースによる輸入商品に対して徴税を行う一方で、消費者の消費要求を考慮し、1回の取引限度額を1,000元(約18,000円)(香港・マカオ・台湾地区は800元)から2,000元(約36,000円)に引き上げ、また、個人年間取引の限度額を20,000元(約360,000円)とする。限度額以内の輸入商品は、関税率を暫定的に0%に設定し、輸入増値税及び消費税の免税措置を取り消し、法定納税額の70%を暫定的に徴収する。

③行郵税の品目別税率を改正
 税目構造を最適化し、国外旅行者及び消費者の申告及び納税を便利なものとし、通関効率を高めるため、現在の4段階の税目(10%、20%、30%、50%)を3段階に調整する。改正後の税率は下記のとおりである。
税目
物品名称
税率(%)

書籍・新聞、刊行物、教育用映像資料、コンピューター、ビデオカメラ一体機、デジタルカメラ等情報技術産品、食品、飲料、金銀、家具、玩具、ゲーム用品、祭日その他娯楽用
15

運動用品(ゴルフボール及びゴルフ用品を含まず)、釣用品、紡織用品及びその加工品、テレビカメラ及びその他家電製品、自転車、税目1及び3に含まれないその他品目
30

タバコ、酒、高級アクセサリー及び装飾宝石、ゴルフボール及びゴルフ用品、高級腕時計、化粧品
60
 
 法改正と同時に、海外旅行者の帰国時の持ち込み荷物に対する税関での検査も厳しくなっている。空港における荷物の抜き打ち検査の頻度の増加、検査機器の設置等の処置により、海外商品の代理購入・転売に対しても課税・徴収を図っていると分析されている。

今回の法改正による日本製品販売への影響であるが、ネット上での販売サイトを運営している会社は、販売に対する影響が明らかになるには暫く時間が必要であると考えているところが多いようである。当事務所としても今後の状況を注視し、関連の情報を関係機関に提供していく。

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