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杭州越境EC(電子商取引)総合試験区

中国経済については減速を懸念する声もあるが、現在も成長を続けておりそれに伴い、個人の収入、消費支出も毎年上昇している。2014年の商品小売総額は約26兆2千億中国元(約458兆5千億円)で前年比12%増であり、2010年(約15兆7千億中国元(約274兆7500億円))と比較すると1.6倍である。また、商品小売市場においては電子ビジネスが増加しており、2010年はネット上での小売取引額は全体の3.3%に過ぎなかったが、2014年には全体の10.8%(取引額約28億中国元(約490億円))を占め、スマートフォン、タブレットPC等の普及と合わせて今後もネット販売は増加が見込まれ、ネット上での小売取引の発展に伴い、国内だけでなく海外との商取引についても成長が期待されている。

このような状況下、中国政府は2013年から浙江省杭州市を越境EC総合試験区のモデルとして越境EC事業(越境ECの自由化、利便性の向上、規範化の推進)のための環境整備を進めており、最初のケースとして2015年3月7日に国務院が杭州越境EC総合試験区の設立、運営を承認した。杭州市が最初の試験区として選ばれた理由として、杭州市には世界的なインターネット企業であるアリババ社が存在していることもプラスに働いたようである。今年1月6日には杭州をモデルとして新たに12の都市(浙江省寧波市、河南省鄭州市、天津市、上海市、重慶市、安徽省合肥市、広東省広州市、同省深圳市、四川省成都市、遼寧省大連市、山東省青島市、江蘇省蘇州市)に越境EC総合試験区を設立した。経済発展地域として認識されている沿岸部の都市だけでなく、内陸部都市にも設置されたことが施策としての重要性を表していると専門家は分析している。
越境ECが円滑に行われ、消費者に商品が確実に配送されるためには、税関、検疫機関、外貨管理局、税務当局等の中国政府部門、商品が取り扱われる港、空港、そしてEC事業者、物流会社、金融機関等が情報を共有することが必要となるが、杭州越境EC総合試験区では、そのために「単一窓口プラットファーム」と呼ばれるシステムを構築し、このプラットフォームの中で、事業者である企業の情報、販売される商品の登録情報や購入希望者からの注文情報が共有されることになる。そのために、事業への参画を希望する事業者は「単一窓口プラットフォーム」に登録されることが条件となる。

先日、杭州越境EC総合試験区に進出している日本の物流会社担当者から話を聞く機会があったが、「単一窓口プラットフォーム」への登録に当たって必要資料の作成要領等不明な点も多く苦労したようである。また、今後同試験区を含む13の試験区は取扱量を巡って競争していくことが予想されるとの事であった。杭州総合試験区の強みは国家で最初に設立された試験区であり杭州総合試験区のルールが他の試験区の基準となっている点や、上述したようにアリババ本社が存在していること、経済発展が進み地域別GDPや一人当たり平均収入額において常に上位を占めている浙江省民の購買力等であろうが、他の試験区に対してどれだけの優位性を保てるかにより今後の事業展開も変わってくると推測される。

中国との越境ECについては、日本企業の間でも関心が高くなっていることから県内企業への情報発信を検討するとともに、事務所として今後も情報の収集に努めていく。

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