湖北省の省都・武漢には、2012年6月に、富士山静岡空港から上海浦東空港経由の中国東方航空便が就航した。これを受けて、静岡県では、民間交流の支援や観光セミナーなどを展開し、就航地との交流拡大を図っている。
2015年に入り、中国大陸各地と富士山静岡空港と間に多くの直行便が就航するようになったが、このような中、中国南方航空の武漢直行便が、本年5月に就航した。
更なる交流拡大が期待されるが、課題として挙げられているのが、日本からの旅客(アウトバウンド客)の増加と、ビジネス需要の掘り起こしである。
このような問題意識の下、このほど、県内の企業、旅行会社、メディア関係者と共に武漢を訪れる機会があり、湖北省の政府関係機関、日本の公共機関、日系の進出企業への訪問について当事務所が調整を担当し、同行させていただいた。
短い滞在期間の中で、黄鶴楼と赤壁も訪問した。この2か所は、湖北省を代表する観光地である。前述のように、武漢との交流拡大に関する事業に当事務所が携わっている関係上、これまで武漢には出張で5回来たことがあったが、観光地を訪問したことは無かった。
黄鶴楼は、武漢市の中心部にあり、出張で行き来する際に何度もその外観は見ていた。今回、初めて訪れたその楼閣は、元々は呉の孫権が223年に築いた夏口城内に建てられたもので、古くから多くの文人墨客が訪れ、詩を詠んだ場所として有名である。現在の建物は1985年に再建されたもので、最上階からは、武漢市内が一望できる。
赤壁は、武漢市中心部から約100㎞の咸寧市にある、言わずと知れた、曹操軍と孫権・劉備玄徳連合軍との戦いの場である。約2時間、バスに揺られて着いたのは「三国赤壁古戦場」という一種のテーマパーク。バスを降りてから、酷暑の中、三国志にまつわる屋外展示などを見ながら30分ほど歩いて、写真で見たことのある「赤壁」の文字の刻まれた壁のある川岸に到着した。
同行者の中には、暑さに耐えてたどり着いたその壁が想像より小さく、周りには水面が広がるだけという状況に、若干の落胆を感じた人もいたようだ。しかし、中学生の頃に吉川英治の「三国志」を読み、そのスケールの大きさや登場人物に魅了された私は、その水面で繰り広げられたであろう壮大な戦闘の模様が想起され、しばらくの間、感動に浸ることができた。
客観的に見た場合、単なる風景を楽しむ観光地としては、赤壁は少し物足りないかもしれない。しかし、三国志に興味のある日本人にとっては、黄鶴楼と併せて、1,800年前に思いを馳せるのには格好の場である。
多くの日本人に、静岡空港から武漢の地に向かっていただくことを願っている。