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雪解け?~ぬぐえない不安の中、信念を持って日中友好を推進

 岸田外相、中国の王毅外相、韓国の尹炳世外相が3月21日、ソウル市内のホテルで会談し、2012年5月以来開かれていない日中韓首脳会談の開催について「最も早期で都合の良い時期に開催するよう努力する」との方針で一致、共同文書を発表した。これに先立ち、日中、日韓の個別会談も実施した。

 同28日には、海南省で開催された国際会議「ボアオアジアフォーラム」に参加した自民党の二階総務会長が習近平国家主席と言葉を交わしたのに続き、29日には福田康夫元首相が習主席と会談した。習主席と福田氏の会談の様子は、「習近平、ボアオフォーラム理事会メンバーと会見」という見出しで、30日付の人民日報の一面トップで写真付きで報道されている。

 今年の中国の旧正月(春節)の休暇期間に、多くの中国人観光客らが日本を訪れた。「爆買い」と言う言葉が一種の流行語となったことに見られるように、既に多くの一般中国人の間で日本を忌避する傾向は薄れており、2012年9月の尖閣諸島国有化を契機に一気に冷え込んだ日中両国の関係は、目下、観光・経済や民間交流がけん引する形で改善に向かっているように見える。中国人観光客の急増に伴い、富士山静岡空港の需要も大幅に増加し、1月28日に天津-静岡便、3月31日には寧波(浙江省)-静岡便が定期便としてスタート。既存の武漢・上海便も週4便から毎日の運航となり、活況を呈している。

 訪日観光客増加の流れを更に確実なものとするため、前述の二階氏は、5月下旬にも日本の観光業界関係者ら約3千人と共に訪中する計画を進めており、これが実現すれば当事務所も参加する方向である。

 一見したところ順調に改善しつつある日中関係であるが、いつも心の片隅に不安を抱えてしまうのが、日中間で仕事をしている私たちの心理的な習慣となっている。小泉首相の靖国神社参拝を契機として、中国各地で反日デモが発生した2005年。その後の回復基調の中での尖閣問題。これまでも、状況が良くなっては急激に悪化するという経験を繰り返し、トラウマのようになっているのである。

 中国側は、今般の日中間外相会談でも、安倍首相が夏に発表する戦後70年談話を念頭に、歴史認識問題での対応を求め、首相をけん制している。8月の政治状況次第では、雰囲気が一気に反転する可能性がある。私たちは常にこのような不安を抱えつつ、この追い風が続き、日中友好の気運が着実なものとなるよう願っている。

 日中関係が不安定であることの根底には、首脳間だけでなく、一般市民の間にも大きな隔たりがあるという現実があり、この状況を改善するために、私たちはできることを地道に行うしかない。即ち、多くの中国人に日本を実際に訪れてもらい、日本の文化や生活に触れ、日本と日本人を知っていただくこと。そのために、観光・空港利用を振興し、地域間交流を推進し、民間交流を支援しているのである。

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