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5月の大型連休にSNSを賑わせた「特殊兵旅行」(2023年6月号)

 中国の大型連休にあたる労働節(4月29日~5月3日)では、アフターコロナの本格到来を体現するかのように国内外の観光地の混雑ぶりが、小紅書などの中国の現地SNSで投稿された。この中で、注目を集めた「特殊兵旅行」について紹介したい。

 これはいわゆる「弾丸旅行」で、夜行の列車・バス移動で宿泊費を浮かせ、カップラーメンや花巻(中国風蒸しパン)で食費を極限まで切り詰めて「映える観光地」を目指す姿が、特殊部隊の行軍のようだと「#特殊兵旅行」のタグを付けた動画が次々とアップされたことで、話題となった。

 振り返れば日本でも、小田実の『なんでも見てやろう』や沢木耕太郎の『深夜特急』など、貧乏旅行のストーリーは若者の冒険心を刺激し、個人旅行ブームを牽引してきた。こうした若者の消費行動が日本では「青春時代の思い出づくり」として概ね好意的に受け止められてきたのに対して、中国現地では「アフターコロナの消費力の弱さを示す」と分析されているのは興味深い。

 本格的な再開を待ち望まれる中国からのインバウンド受入に向けて、県内では沿岸部のFIT(海外個人旅行者)をターゲットにするとの声が多いが、個人旅行者には富裕層のほか、こうした弾丸旅行者も含まれていることを意識する必要があるだろう。消費額は小さいものの、SNSを駆使した情報拡散力には目を見張るものがある「特殊兵旅行」の若者たち。県内での受入再開に向けては、客層をイメージしながら商品造成を進めたい。

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