昨年末、衆議院予算委員会での首相による「台湾有事発言」を契機に日中関係は急速に冷え込んだ。12 月29、30 日には台湾周辺で大規模な軍事演習が行われるなど緊張が高まる中、現地の人々はどのような生活を送っているのか?その現状を確かめようと福建省・厦門へと向かった。
上海から飛行機で約2時間、福建省は、古くから海洋シルクロードの要所として茶の輸出で栄えてきた。同省からは約1,500 万人が世界各地に移住したとされ「華僑の故郷」とも言われる。沿岸都市の厦門は、年中温暖な観光都市として知
られるが、1981 年には経済特区に指定され、近年はAI・バイオテクノロジーなど先端技術でも注目される地域だ。
空港からタクシーで市街地に向かうと、初老の運転手が現地の暮らしぶりを教えてくれた。多少の緊張を感じつつ「両岸の緊張は暮らしに影響しているか?」と尋ねてみると、「影響は特にないね」とあっけなく返された。現在、中国大陸から台湾への渡航には厳しい条件が課されているが、「福建省の住民は台湾と血縁が深く例外的に渡航が容認」され、仕事や親戚づきあいでの往来や、親族
を頼って台湾から厦門に留学する学生も多いそうだ。「厦門タワーから台湾が見えるぞ」と勧められて登ってみると、金門の島影がはっきりと見える。パスポートがないと渡航できず、台湾ドルで暮らす土地が、目と鼻の先に広がっている。(厦門から直線距離で約2km・フェリー30 分)
翌朝、厦門と金門島を結ぶフェリー乗り場を訪れると、船便は1時間に1便の頻度で運航し、多くの渡航者で賑わっていた。声をかけてきた客引きは、人民元と台湾ドルの両替や、通信システムが異なる両岸の格安Wi-Fi を貸し出して日銭を稼いでいるという。厦門に到着した男性(金門島で土産店を経営)に話を聞くと、金門島は共産党軍と国民党軍が戦火を交えた歴史もあるが、現在は島内の60~70 代が厦門のマンションを買うのがブームで、今回は友人の新居を訪問するため厦門を訪れたという。現在、台湾のメディアでは日中関係の悪化を懸念する報道ばかりだとして、「日本を心配しているよ」と笑われた。
夕刻、厦門の八市海鮮市場を訪れると「歓迎台湾同胞回家(台湾の同胞おかえりなさい)」と掲げる飲食店が並んでいた。日暮れ前から満席となる人気店では、台湾からの常連客も多いという。日本のメディアでは激しい舌戦ばかりが報道される両岸関係だが、足元では、地縁や血縁が密接に絡み合い、人と金が活発に行き交っている。
